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近大マグロに代表されるような産学連携が注目を集めています。

過去に対するアンチテーゼとして、大学のような教育機関がビジネス的な文脈で意義のある取り組みをしていることは新鮮に映ります。また学問を社会に還元したり、学生に机上の空論ではなく実学を教え込んだりしているイメージがそこにはあります。

確かに学問をビジネスに発展させようという取り組みは奨励されるべきことでしょう。一方で、そうではない分野がその陰で霞んでしまうことには違和感を覚えます。

戦後のバブル経済が弾けて以降は、純粋な研究に対する予算が顕著に削減されているそうです。国さえもが、アカデミーに対してマネタイズすることを促す風潮があります。

これはノスタルジアではありません。衰退している産業、コストパフォーマンスで海外勢に引き離されつつある産業を補助金や関税で守ろうという話とはまったく異なります。

確かに基礎研究は短期的にはお金を生みません。だから資本経済の中ではワークしません。株主はリターンを求めるし、それは健全なことです。

一方で、長期的に見たとき、基礎研究は人類全体に対して大きなリターンを生むことがあります。

こういった資本経済にそぐわない学問、外部コストの問題、所得の再分配などは本来財政が担保することでバランスが取られるはずですが、今、そこに不均衡が生まれています。

 

このまま「お金を生まない」という理由でサイエンスを始めとした学問、アート、文学などが衰退することを望む人がどれだけいるでしょうか。フロンティアを停滞させてしまったら、私たちは豊かさの一部を失うことにはならないでしょうか。

そんな思いから「THE FRONTIER」は立ち上げられました。

サイエンスやアートは、短期的には収益を生みにくいかもしれません。けれど感動や知的好奇心は間違いなく産み落としていきます。この感動を、知的好奇心をお金に変えて、フロンティアに還元するサイクルを生むことを目指して、このサイトは小さな一歩を踏み出したのです。

 

文:酒井 聡