テーマ特化の歴史本が面白すぎる – 珠玉の10冊

みなさんは中高生の頃、歴史は得意でしたか?

著者は暗記が大の苦手で、また教科書からいまいち「意味性」を見出すことができず(つまり各出来事の歴史的な意味を理解できず)、いつも散々な点数を叩いていました。ちなみに理系を選択したので高校生以降はノータッチです。

そんな著者が、最近は歴史の本にハマっています。

ファッション、美術、文学、数学、医学などビューポイントを固定すると、歴史には意味が生まれ、文脈が明瞭となり、過去から今へと続く地図が浮かび上がってきます。

そもそも分かることが非常に楽しく、また未来を考える補助線を手に入れることができます。

今回は歴史が楽しくなる、珠玉の10冊をお届けします。

ファッション


ストリート・トラッド: ~メンズファッションは温故知新 (単行本)

モッズ、ロック、パンク、ヒッピー、スケーターなどストリートのカルチャーを、それぞれ思想、ファッション、音楽などの切り口で解説したもの。

「ストリートカルチャー」という言葉はそもそも非常に曖昧で捉えにくいものだと思いますが、その意味を抽象的なレイヤーで理解することを手伝ってくれます。

どういった背景でそのカルチャーが生まれて、そして最終的には廃れてしまったのか。そこにはパターンがあり、再現性があり、これからも繰り返されていくことを予感させます。

お金


お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力・・・はこう「動いた」

現実問題として、豊かであれば文明は長続きするし、困窮すると破綻する。栄華を極めてもお金が尽きたら戦争に負けるし、マジョリティが食うに困れば革命が起きる。

文明や国家の存亡は、格差是正などの富の再分配も含めたサステナビリティに依存しているということが、歴史を辿るとよく分かります。

地政学


図解 世界史で学べ! 地政学

「グローバル」というキーワードが生まれて、特に日本のような島国にいるとあたかも各国がフェアな条件であるかのように錯覚をしてしまいそうになりますが、立地はパワーバランスに大きな影響を与えます。

なぜ韓国は北朝鮮との友好を重視するのか、政策的に反日のポジションを度々取るのかといったことも、地政学的に説明のつくことです。

グローバル化が進んでいるからこそ、国家間の関係に大きな圧力を与えるスタティックな地政学を学ぶ意味があります。

美術


美術の力 表現の原点を辿る (光文社新書)

時代や国によって様々な美術が生まれてきましたが、それぞれには当然ながら生まれた背景があり、トレンドがあり、必ずしも画家がただパッションを込めてきた結果系譜ができあがっていったわけではありません。

美術というと、現代アートのようなハイコンテクストの「よく分からないアート」をイメージされるかもしれません。そういった傾向が生まれてきたのは写真技術の生まれてきた19世紀以降の話であって、それ以前はメディアや調度品としての役割を担うものでした。

アートとは、表現とは何か。なぜ人は作るのか。歴史や個別の画家の意図は、それらを咀嚼する手助けをしてくれます。

文学


ワセダ大学小説教室 書く前に読もう超明解文学史 (集英社文庫)

戦前から現代まで、文学における表現のトレンドと、そのトレンドを代表する具体的な作家について、時系列にまとめられたものです。小林多喜二、太宰治、安部公房、川端康成、三島由紀夫、村上龍、村上春樹といった作家がどういった時代背景で何を描こうとしたのか。

本自体は小説家を目指す学生に向けた講義の3部作の3冊目という立ち位置にあるのですが、文学史として純粋に楽しめる内容となっています。

生物進化


カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史 (ブルーバックス)

カンブリア紀に生物は大変な多様性を手に入れたという話は有名ですが、その背景には視覚の獲得があります。生物は目を手に入れたとき、外敵から逃れるために背景に同化したり、早く泳いだり、硬い殻を手に入れたりといった進化を遂げる必要に迫られました。それは捕食者側についても同じことです。

そういった古生物の進化の過程を、具体的な生物の化石を元にしたイラストを例に挙げながら丁寧に説明してくれるのが本書です。

医療


ペニシリンはクシャミが生んだ大発見―医学おもしろ物語25話 (平凡社新書)

現代医学が発達したのは高倍率の顕微鏡が発明されるのを待つ必要があり、割と最近までとんでもない治療が繰り広げられていました。

具体的には人に犬の血を輸血したり、曲芸の呑剣の要領で胃カメラを頑張って飲んだりといった、ちょっと考えたくもないような話です。

人体実験の上に医学は成立していて、それを享受できている我々は現代に生まれたことを感謝するはずです。

気候


人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

地球は寒冷な時期と温暖な時期を繰り返していることは有名な話かと思います。

地軸の向き(地球は傾いたままこまのようにゆっくり回っていて、角度は変わらないまま地軸の向きは変化している)や植物の飽和など、複合要因がその背景にはあって、そういった過去の数値を元に考えると現代は寒冷期に陥っていてもおかしくないタイミングだといいます。人間の自然破壊や排出する二酸化炭素が氷河期を遠ざけているような可能性も考えられるわけです。

氷河期の到来はリーマンショックや米中貿易摩擦などとは比較にならないインパクトを我々にもたらすでしょう。それにしては私たちはあまりにも地球のことを知らなすぎるのかもしれません。

数学


フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

「 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない」という美しくさえ見えるシンプルな定理をフェルマーは17世紀に残しました。このとき、紙面に限りがあるという理由でフェルマーは証明を省略しています。

フェルマーの没後、この定理はメモの中に発見され、どうやら成立することは確からしいものの、誰も証明できないという事態に陥ります。

この定理を解き明かすために数々の数学者が挑みます。あるいは別問題の解決を目的に、様々な証明がなされ、それらがフェルマーの最終定理を解くための階段として少しずつ積み上げられていくこととなります。

その過程は半ば数学史の様相を呈し、また数学者とは何なのかを私たちに垣間見せてくれます。

文明


サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

言わずとしれた、人類史の金字塔。

狩りや処刑、稲作など、まだ人類の営みがシンプルだった頃にまで遡ることによって、人の社会の構造的な成り立ちを俯瞰することができます。

「読むべき本」が見つかれば読書は本当に面白い

著者は中学生の頃から読書をする習慣がありますが、当然ながら読書自体が面白いわけではなく、面白い本が読書を面白いものにしてくれます。

著者が社会人一年目のとき、当時は純文学やビジネス本ばかりを読んでいたのですが、会社のおじちゃんが「聖の青春」「フェルマーの最終定理」などは絶対に読んだほうが良いということを教えてくれて、そのおかげでノンフィクションの面白さを知り、読書が一段と楽しくなりました。

本記事が皆さんにとってそういったきっかけの1つになることを願います!

株式会社ニューロープ 代表取締役。

ファッションに特化した人工知能『#CBK scnnr(カブキスキャナ)』、インスタグラマーの類似アイテムを買える『#CBK』、アートメディア『ART LOVER』、メディアやブログを簡単にマンガ化できる『AI-CATCHER』などを展開。

九州大学芸術工学部で芸術と工学を学ぶ。中小企業診断士。