メルカリとのコントラストに見る、リユース市場におけるブランディアの好業績

皆さん、ブランディアをご存知でしょうか?

株式会社デファクトスタンダードの運営するブランド品の買い取り・販売サービスで、菜々緒さんのCM「ブランド売るならブランディア」のサウンドロゴが耳に残っているという方も多いと思います。

リユース市場はメルカリの総取りというわけでもなく、デファクトスタンダード社も継続的な成長を続けています。

この成長の背景には何があるのか。メルカリとどのように棲み分けているのか。いくつかの観点から見ていきます。

ブランディアの業績サマリー

2018年9月期3Qの決算では、売上高約88億円で、対前年同期比10.3%とかなりの角度で成長しています。そもそも「ブランド品・衣類・服飾品」のリユース市場が毎年10%程度の成長を続けているので、その市場拡大の追い風を順調に受けるような格好となっています。

ブランディアというと「買い取りのイメージが強い」という方が多いかと思いますが、その主な理由は、買い取った商品をヤフオク!、モバオク、Wowma!といったサードパーティのマーケットに出品して販売するという流通経路を取ってきたところにあります。

ここ最近はブランディアオークションなど自社ECに力を入れていて、経由売上高は前年同期比で72%成長とあります。ただし売上構成比については言及されていないので、まだそこまでではないのかなという見当はつけられます。

ちなみに売上総利益率は49.9%、営業利益率は3.6%。買い取りを促進するための広告費、買い取り・査定のオペレーション、商品の撮影・採寸・原稿といったいわゆるササゲ業務、保管を含めた物流周りなど、販管費のかかる構造となっています。

ササゲを在宅ワークでのオペレーションにしたり、販路を自社ECに寄せたりしてこの販管費を圧縮しつつ、市場拡大の波に乗れば順調な成長が期待できる状態にあります。

法人による鑑定はC2Cでは成立させることが難しい明らかなアドバンテージ

ブランディアを初めとしたB2Cの事業会社の大きな強みは、鑑定体制を確立しているところと言えるでしょう。

メルカリで買いものをしていると分かると思いますが、ブランドものの時計・財布・バッグなどを購入するのは少しためらわれるのではないかと思います。さすがに5万円はたいて偽物を掴まされては目も当てられません。

メルカリはブランド品に特化したAI鑑定+補償付きのフリマ「メゾンズ」を2018年8月にクローズしています。原因はAI鑑定を成立させるためにユーザー側がアプリに指示されるかたちで複数ショットの写真撮影をする必要があってその手間から商品が集まりにくく、出品アイテムの少なさから買い手も定着しなかったからというような憶測はできますが、定かではありません。(筆者個人的には眺めているだけで楽しくなる、好きなサービスでした。)

反面でブランディアでは真贋を気にせずに買いものができます。鑑定・ササゲ・物流などのオペレーション業務はセンターでやってしまった方が生産性が高く(メルカリは出品者が自分の労働コストを勘案していないだけで構造的に生産性が高いわけではないと思います)、このアドバンテージをC2Cが乗り越えるのは当面は難しいと思われます。

リユース商品とトレンドサイクルとうまく噛み合っている

ここ最近、ビッグシルエットのトレンドが継続しています。2-30年前に当時のお金を持った若者たちが買い漁ったラルフローレンの古着が、一周回ってオンファッションとなって今の学生が買うというようなことが現実に起きています。当時数万円で販売されていたアイテムたちは縫製もしっかりしていて、世代を越えてもヘタれません。

トレンドサイクルというのはやはりあって、理由は消費者が飽きるからとか、ブランド側が計画的に去年のアイテムを陳腐化するために流行をシフトさせているからとか色々言われています。現実的には要因が複合的すぎてトレンド予測に使えるような代物ではありませんが、周期らしきものが存在することは事実と言えるでしょう。

1周期前の良品がリユース市場に出回り続けるというサイクル自体には無理がなく、今特有の現象ということもなさそうです。

かく言う筆者も10年前、学生の頃は古着屋の「シカゴ」で煙草臭いラルフローレンを買っていました。お金のない学生にとってブランド品が1,000円とか3,000円とかで買えるマーケットというのはいつの時代もありがたいものです。

ブランディアはとにかくコスパが良い

しのごの御託を並べてきましたが、ブランディアオークションを見ていただくのが一番手っ取り早いと思います。

下記、筆者の購入履歴をお恥ずかしながら公開します。

マッキントッシュのブルゾンが4,000円、新品タグ付きの23区のパンツが1,475円です。カールヘルムは懐かしさも相まって買いましたが、着ていると会う人々から突っ込んでもらえて良い感じです。笑

このコスパが、ものが売れる何よりの理由だと思います。オークション形式ではあるものの、期限が24時間なので買うのに待たされるようなストレスはありません。

デファクトスタンダードの方とお会いする機会があって、勉強がてら眺めていたのですが、思わず色々ポチってしましました…。

消費者にとって魅力的なリユース市場

メルカリとブランディアに共通するのは、圧倒的なコストパフォーマンスの高さです。2-3回袖を通されただけの商品が3-7割引くらいで流通するということが起きていて、ブランド側がこれに太刀打ちするのはなかなか大変でしょう。

リユース品は石油と同じように有限なものなので、市場が今の勢いで順調に拡大していくと、どこかで需給バランスがひっくり返って今ほどコスパの良いものではなくなってしまう可能性も考えられます。一方で、日本国内で言えば人口の逆ピラミッド構造がうまくハマって供給サイドが衰えないパターンも捨てきれません。

リユースの魅力を認めつつも、接客・スタイリング・パーソナライズ・シェアリングなどで消費者側の時間的・空間的なコストの削減、付加価値の創造などを通して、単純な金銭的な費用対効果ではない部分でバリューを生んでいくことが従来のブランド・小売・メーカーには求められていると思います。

うちもファッションテックの一翼を担って、サステイナブルなファッション領域の多様性に貢献していきたいと思う次第です。

株式会社ニューロープ 代表取締役。

ファッションに特化した人工知能『#CBK scnnr(カブキスキャナ)』、インスタグラマーの類似アイテムを買える『#CBK』、アートメディア『ART LOVER』、メディアやブログを簡単にマンガ化できる『AI-CATCHER』などを展開。

九州大学芸術工学部で芸術と工学を学ぶ。中小企業診断士。