ファッション市場としての台湾

一週間ほど台湾視察に行ってきました。主に現地のファッション企業を訪問させていただいたり、現地の方とお酒を飲んだりして情報収集しました。個人的には観光よりも目的性のある出張の方が情報として得るものが多く、楽しめます。

台湾に関して、マーケットが限られていることからも「ファッション市場」という切り口ではそんなに記事が出回っていないようだったので、世のため人のため、ここにいくつかのチップスをしたためておきます。

台湾にはギリギリ四季があってダウンコートが売れるらしい

台北の緯度は大体25度くらい。緯度的には沖縄の宮古島に近く、冬の最低気温は寒い日で10℃くらいになるそうです。

最低気温10℃というと日本では「ちょっと肌寒いかな」程度だと思いますが、現地ではダウンコートを着る人が少なくないそうです。寒い季節が短いこともあって暖房設備が整っておらず、自宅やオフィスなど室内が寒い傾向にはあるそうですが…。

現地のユニクロ店舗でもウルトラライトダウンを全面に押し出していました。MD的に結構な面を占めていたことからも、売れ筋商品であることは間違いなさそうでした。

実際に街を歩いていても、最高気温25℃という日本で言ったら立派な夏日にも関わらず、トレンチコートを着ている姿をちらほら見かけました。

シーズンがあること、単価の高い秋冬ものが売れるということはマーケットとしてすごくポジティブな要素ですね。

台湾では百貨店の売上が伸びている

台湾では百貨店が好調だそうです。「夏は暑いしスコールがあるから路面店より百貨店での買いものを好む文化がある」という話をうかがいました。日本のようにファッションビルなどが台頭するのではなく百貨店が幅を利かせている理由にはなっていませんが、いずれにしても好調であることはファクトです。

ちょっと古い記事ですが、実際に年率6%成長という日本では考えにくい成長率を叩き出したりもしているようです。

三越伊勢丹ホールディングスが92%出資している新光三越は台湾内に13館も展開されています。いろいろな経緯があって現地資本となっている遠東SOGOも8館を展開。人口が日本の1/4足らずであることを考えるとなかなかの店舗数と言えそうです。

台湾の店舗にはショールームとしての役割も

台北には日本のブランドもたくさん出店しています。ユニクロ、niko and…、LOWRYS FARM、earth music&ecology…。日本のデザイナーズブランドを取り扱っているセレクトショップも少なくないそうです。

日本のブランドは日本での売価と比較して1.3倍〜2倍くらいの金額で販売されているとのことでした。流通コストや関税を加味するとどうしても割高になってしまうとのこと。

このため「台湾の店舗で商品を見てマンダリン語で説明を受けた上で、日本で購入している客も多い」とのことでした。

日本政府観光局の調べによると、2017年の台湾からの訪日客は456万人。台湾の人口は2,350万人くらいなので、単純に計算すると毎年6人に1人は日本に来ていることになります。(来日客数は延べ人数なのでもちろん厳密には異なります)

航空チケットもLCCを使えば往復1万円程度で手に入り、航空時間も3-4時間程度なので、金額的にも所要時間的にも東京〜大阪の旅行と大差ありません。日本に来て半年分くらい服を買ったりコスメを買ったりしたら旅費をペイできてしまいます。

ここから現地店舗の広告塔的な役割が見えてきます。直営店なら文句ないでしょうが、セレクトショップや卸先など現地法人としては割りを食っている構図です。

大陸への足がかりとしての台湾

台湾の人口は先述の通り2,350万人。新卒の給料は10万円そこそこが相場らしく、またZARAやH&Mのようなファストファッションからラグジュアリーブランド各社までグローバルアパレルは軒並み進出していて、超魅力的な市場とは言いがたい状況にあります。

それでも進出するブランドが後を絶たないのは、その先に広がる中国大陸のマーケットを一因としているでしょう。

台湾で法人を設立して、現地メンバーでチームビルディングし、そのチームで中国に進出していくというのが一つの定石となっているそうです。

ただし台湾と中国本土の感覚も大きく異なるらしく、役人に賄賂みたいなものを請求されたり、現地スタッフのマネジメントに苦労したり、突然の法改正で立ち行かなくなったりと、日本人が中国で失敗するのと同じようなことは変わらず起きるそうです。

  • 言語の壁を乗り越えやすい
  • 台湾の信頼できるマネージャーを責任者に据えられる

というアドバンテージをどう見るかですね。中国で信頼できるパートナーが見つかったらそれが手っ取り早い気もします。

出張にかかった費用は航空チケット、宿、wi-fiなど諸々合わせて7万円程度でした。街を歩いていてもグローバルな飲食チェーンが軒を連ねていて、日本の地方都市の生き写しのよう。スタバだらけでワークスペースに困ることもなく、何から何まで国内出張と変わりませんでした。

ファッションAIを展開しているニューロープとしては現地企業への売り込みをしに行ったのですが、現地Eコマースで売上規模の大きなところが数限られているところからも、現地法人を設立するのではなく、出張ベースで営業するか、現地代理店とパートナー契約を結ぶようなアプローチが良さそうだという結論に至りました。

人口動態的にはやはりインドネシアやベトナムあたりの市場を先んじて取りにいきたいものです。

株式会社ニューロープ 代表取締役。

ファッションに特化した人工知能『#CBK scnnr(カブキスキャナ)』、インスタグラマーの類似アイテムを買える『#CBK』、アートメディア『ART LOVER』、メディアやブログを簡単にマンガ化できる『AI-CATCHER』などを展開。

九州大学芸術工学部で芸術と工学を学ぶ。中小企業診断士。